たまきはる 宇智の大野の馬並めて 朝踏ますらむ その草深野
(魂がみなぎるような宇智の大野原に馬を並べ、草深い野を進んでいかれるのだ)
萬葉集巻一には、こんな歌が出てきます。
大和朝廷が、全国100万町歩開墾計画と言うのを立てたが達成できなかったと言う
説があり、
そういう開墾計画自体が本当にあったのかも、わかりませんし、
当時の1町歩は、1ヘクタールに満たなかったと言う説もありますが、
それらの意見も踏まえて推察してみると、
どうやら、日本の農地は、60-80万ヘクタール程度しかなかっただろうと考えられます。
森林を除く日本の国土は約1200万ヘクタールで(飛鳥時代には、北海道や沖縄は
「全国」のうちに含まれないので、もう少し少なくなりますが、)
平地でも、萬葉集の歌のように「草深野」が広がり、耕地になっていた場所は
極めて少なかったことが予想されます。
古い文献に書いてある数字の信頼性と言うのは、
なかなか難しいのですが、
16世紀に行われた太閤検地の頃には、1町歩は現代の1ヘクタールにほぼ相当する
面積だと考えられており、
約200万町歩(200万ヘクタール)と言う集計結果は、それなりに信用することが出来るでしょう。
こうした過去の数値には、信頼性にある程度の疑問があることを承知の上で、
あえて、日本の耕地面積の推移について、グラフ化を試みたのが、下記の図です。
プロットは「点」でなく、円に、
折れ線は、実線でなく、点線にしてあるのは、
かなり、信頼性が低い数値なので、だいたいの推察値だという意味で
そういう風にしてあるわけです。
現在、森林を除く国土の4割は耕地で、
最大となった1960年代初頭には、
森林を除く国土の半分=約600万ヘクタールが耕地でした。
このように、平野部が開墾が進んだのは、
かなり後世のことであり、
飛鳥時代や鎌倉・室町時代には、それほどでもなかった…
つまり100万ヘクタールもなかった農地が、
どうにか、戦国時代が終わる頃には、
200万ヘクタール程度になり、
それが、20世紀半ばには600万ヘクタールに達した…
実に1000年以上の歳月をかけて、
日本の耕地面積は、10倍ぐらいに増えた…
と言うような事は、最低限言えるのではないかと
思いますが、
そういう歴史を視覚的に理解していただくための図として、
上図を受け取って頂ければと思います。
そして、1960年代以降の農地の減少…
これは、宅地化によるものもありますが、
地目上は、「農地」のままであっても、
遊休化し、事実上耕されていない場所が
広がっている…
この点についての詳しい説明は、
また次回に致しますが、
どうやら、今の日本で実効稼働している農地は、
300-350万ヘクタール、もしくはそれ未満と見るべきなのです。
1000年以上かけて10倍に増やしたはずの農地が、
たった半世紀で、半分が荒れ果てている…
国土の保全と言う観点からみると、
非常に重大な事態が進行していると言えるでしょう。

